【がきお物語 第2話】イクメン度10%
代表あおむし
がきお物語 第2話
前回はがきおの仕事人間ぷりを語った。
今回はがきおのイクメン度10%ぷりを語るとしよう。
前回述べたように、がきおは平日22時に帰宅すれば妻に驚かれる男である。
午前様など毎度のことである。
平日は(時に休日も)ほとんど家に居ないので、育児どころか子どもの起きている姿を見ることもままならなかった。
断っておくが、がきおは育児をやる気がないのでは決してない。
時間がないだけである。
がきお自身は、(別に妻から不満が出ていたわけではないが)このままでいいと思っていたわけではない。
定時で帰ってプライベートの時間をもちたい。
ひいては残業のない世の中を作りたいという壮大な夢までもっていた。
それに、いくら仕事人間といえども、がきおだって『今時の父親』の端くれである。
仕事だけしていればよかった一昔前の父親に比べれば、『今時の父親』は明らかに育児に積極的である。
がきおだって、おむつも替えればお風呂にも入れる。
ご飯も食べさせてやるし、泣いたら抱っこおんぶは当たり前。
そう考えている。
決して、これらがすべて妻の仕事であるなどとは思っていない。
時間があるときは、これらを率先してやるような男である。
お宮参りのときにオムツを替えるがきおを見て、がきおの実父と義父が
「我々なんぞオムツを替えたこともないですなァ」
と感嘆の声をあげていた。
妻の親族の結婚式のときも、着物を汚せない妻に代わり、がきおは精力的に子どもの世話をした。
初めて『今時の父親』を目の当たりにした妻の親族達は、がきおに大いなる畏敬の念を抱き、それはもう褒めちぎったものである。
このように、がきおは決して育児に消極的な男ではない。
時間があるときは、割とこまめに動く男なのである。
見る人から見れば、立派なイクメンである。
(事実、がきおは、義親からベタ褒めのイクメン評価を受けている。)
ではなぜ、がきおのイクメン度が10%なのか?
それは、この数字が彼の自己評価だからである。
周りから見ればイクメンに見えようが、がきおにすれば、自らが目指す父親像には程遠いと感じているのである。
なんともまあ、自分に厳しい男である。
しかしながら、妻から見れば、イクメン度10%というのは至極当然の数字である。
なぜなら、(高評価を受けやすい)有事のときはがきおはイクメンとして出動するものの、普段の稼働率は、家に居ないのだから当然0%である。
さあ、ここでもし夫が「オムツも交換するし、抱っこもしてる。こんなに頑張ってるんだから俺のイクメン度は70%くらいだ!」などと妻にアピールしようものなら、妻から「ふざけんな」と怒号が飛ぶのは、想定内の範囲内だと思う。
幸いがきおは多少育児をやったところで、「こんなの君の負担に比べればすかしっ屁にも値しないさ」と謙遜し、決してこれだけやったアピールをしてこない男であった。
だから、夫の育児貢献度が10%であっても、妻はそれに関して遺憾の意を示したことがない。
我ながら心の広い妻だと自画自賛したくなるところだが、やめておく。
これはひとえに、謙虚な夫を持ったからだと言っておくことにする。
つづく