【がきお物語 第6話】気づかない夫と勝手な妻
これは、仕事人間だった男が心機一転イクメンを目指すノンフィクション物語である。
最近妻が土曜日に仕事をすることとなり、夫に子どもを預ける機会が増えた。
家を空けるせいで、がきおは一日中子どもの面倒を見ることになった。
いや、言い直そう。
妻が土曜日に家を空けるおかげで、一日中子どもと触れあえることになった。
なんとも有難いことである。
どうやって過ごすつもりなのかしら?と妻は思っていたが、なんとかやっているようである。
実家に行ったり。
ぱぱてらすに参加したり。
あるいは同じような境遇のパパ友とパパ会をしたり。
とにかくなんとかやっているようである。
妻が居ないなら夫は自分で考えるのだ。
ついつい夫と一緒に居ると口を出してしまう妻も、ここは任せるしかない。
そもそも、なぜ夫が1人で子どもの面倒を見ることを妻が心苦しく思わないといけないのだろう。
世の夫は、果たして妻が1人で子どもの面倒を見ることを心苦しく思っているのだろうか。
ところで。
妻が専業主婦の場合、夫がいなければ家庭がまわらないなんてことはあまりない。
がきお一家でもそうだ。
ワンオペ育児上等。
お金さえ入れてくれれば、夫が家にいなくても別段問題は起こらない。
あ、一度だけ夫がいないとまわらないときがあった。
息子が夜中に腸炎で急に吐き出したときだ。
深夜1時頃だっただろうか。
その日がきおは仕事上の付き合いで飲みに行っていた。
息子が吐き出したのに気づき、妻あおむしも目覚めたが、そこにがきおの姿はなし。
吐き続ける3歳の息子。
泣き続ける0歳の娘。
息子の吐瀉物にまみれる妻。
そして、まだ帰らぬ夫。
「…ふざけんなガキオ!」
ブチ切れてスマホを手にとり電話。
「今どこ!?」
「え?リビングやけど」
「あ、そうなん?(拍子抜け)…とにかく今すぐ2階に来て!」
「ハ、ハイー!」
これが夫が家に居てよかったと思った瞬間である。
と同時に、夫も「家に居てよかった」と思った瞬間である。
とにかく、非常事態のケースを除き、夫が家に居なくても事実上問題は起きないのだ。
「亭主元気で留守がいい」とはよく言ったものだ。
ロクに家事もできない夫に手伝ってもらうよりは、自分でしたほうが早いし質も高い。
じゃあワンオペ妻は何が不満なのか?
それは簡単なことだ。
「ムカツク」のだ。
女性は感情の生き物である。
夫が居ない方がいいと言いながらも、
家庭そっちのけで家に居ないとだんだん腹がたってくるのである。
家に居てもそれはそれで腹がたつが、居なくても腹がたつのである。
ずいぶん勝手な生き物である。
夫は、このずいぶん勝手な生き物と生きていかなければならない。
将来仕事を引退し、家に居る時間が格段に増えたとき、この生き物に嫌われていたら末恐ろしい事態となることは容易に想像できる。
だからこそ、夫は妻と「今」真摯に向き合わないといけないのだ。
逆もまた然りである。
男というものは、本当に気づかない生き物である。
言わないと気づかない。
言ってもわからない。
これくらい察しろよというのは絶対に通用しない。
これを口に出すか否かはさておき、妻がブチ切れると夫がよく思うこと。
「最初からそう言ってくれればよかったのに…。」
このセリフ、男性に言われたことがある女性は多いのではないだろうか。
私もうら若かりし頃、当時付き合っていた男に何度言われたか知れやしない。
そのおかげだろうか。
年齢を重ねるにつれ神経が図太くなり、今、夫にはなんでも口に出して言っている。
男というのは決して察しない。
口に出して言わないと分からない。
黙ったままイライラしていても時間の無駄。
言いたい事も言えないこんな世の中はPOISONなのだ。
でも妻は妻で、この本当に気づかない生き物と生きていかなければならない。
気づいていないなら気づかせる。
できないならやんわり指導する。
できたらちゃんと礼を言う。
夫婦はきちんと言葉に出して「ありがとう」や「ごめんね」を伝えるべきだ。
「言わなくてもわかる関係」が美徳なのではない。
その一言を伝えることで、案外夫婦関係が円滑になるものだ。
「ちゃんとありがとうやごめんねを言いなさい!」
子どもには言っているけど、自分はできている?
夫婦は、子どもだけでなく夫婦関係もうまく育てていかなければならない。
子育て真っ盛りのこの時期にどれだけ夫婦一緒に歩めるかがカギだ。
まさに「いつやるの?今でしょ。」である。
お互いに認め合える関係へ。
夫婦で四苦八苦考え、労わりあえた分、後々美談になるはず。
妻は、夫は、今後一緒に生きていくパートナー。
「うちの旦那なんて…」
「うちの嫁なんて…」
他人に愚痴を言う前に、お互い向き合ってコミュニケーションをとろう。