【がきお物語 第7話】がきお、ワンオペ育児体験キャンペーンに参加する
これは、仕事人間だった男が心機一転イクメンを目指すノンフィクション物語である。
最近のがきおは帰りが遅い。
一時、むねおという男に刺激を受けて帰りが早くなっていたのだが、
再び深夜帰りの日々が続いている。
これには理由がある。
最近のがきおは、毎週土曜日を完全に子どもとの時間に充てなければならないのだ。
それは、毎週土曜日が妻のおひとりさまタイムになったからだ。
妻は昼前に家を出て、帰りは基本酔っ払って終電で帰る。
こんな生活を半年間やってみよう!
夫婦会議でそう決めたのだ。
「僕、やるよ」「あなた…!!」
つまり、がきおはすべきことを平日に終えなければならない。
本業の仕事はもちろん、日頃の勉強や読書もすべて平日にこなす必要がある。
最近は自治会の仕事までやっている。
これがなかなかのクセモノで、レベル4のハードワークである。
このキャンペーンは、夫がワンオペ育児を理解するために夫婦が企てた計画だ。
長らく妻にワンオペ育児をさせてきた夫が今度は身をもってそれを体験するのだ。
もっとも、優しい妻は昼と夜のごはんの用意だけはしておく。
がきおは料理がてんでダメなのだ。
あるとき、妻は夜ごはんに魚を焼くようメモを残しておいた。
4歳の息子の大好物、鯖だ。
すると、夕方がきおから妻に電話がかかってくる。
「いつまでたっても鯖が焼けない」と。
かれこれ30分は焼いているが、いまだ生煮えなのだという。
言っておくが、がきおの家は3~4年前に新築し最新の機器を備えている。
「切身」のスイッチを押せば、火加減や焼き時間など自動で設定してくれるはずだ。
いつも中火で13分ほど焼いてくれる。
しかし、がきおはどこをどう設定したのか、弱火で延々と焼いていたのだ。
30分焼いて出来上がったのは「鯖のたたき」という斬新な一品である。
一方、4歳の息子は鯖の焼き方を知っている。
母親がするのを見ているからだ。
「まずこのアルミホイルを敷くんやで」
「それからこのスイッチ押すんやで」
4歳児に鯖の焼き方を指南される男、がきおであった。
「父ちゃん、魚さわったらちゃんと手洗いや」
つづく